人事院規則14−8第一項関係第4項第二号(3)に関する人事院の見解

申告は家賃収入が500万円を超える見込みでか、それとも超えた時点か、それが問題だ

 「To be or not to be, that is the question.」

 

 ハムレットですね。さて、なぜここでハムレットで最も有名なセリフが出てきたのかと言えば、公務員が不動産投資をやるうえで、非常に重要な問題(不動産投資が事業的規模に達しているかどうか)についての基準が不明瞭だったからです。

シェイクスピア

 それがどうシェイクスピアのセリフと関係するのかと怒られそうですので、初めから説明しましょう。このサイトの他のページ(公務員が不動産投資をするうえでの問題点)などでも詳しく説明していますが、公務員が不動産投資をすることは認められています。

 

 5棟10室の基準に達せず、家賃収入が年間500万円未満であれば、不動産投資をしていることを申告する必要すらありません。そして所有する物件が5棟10室以上になるか家賃収入が年間500万円以上になった場合は申告して許可を取る形にはなりますが、問題がなければ認めて貰えます。

 

 つまり、公務員は不動産投資を行って構わないということです(物件の管理は委託するとか官職と事業との間に特別な利害関係がないことなどの条件はあります)。

 

 さて、私が公務員時代に所有する物件が5棟10室を超え、そして年間家賃収入が500万円を超えて、所管の大臣(私は国家公務員だったので)から許可を貰うために職場で兼業の申請をしたのは物件を購入した次の日でした。

 

 この時に対応したのが人事の係長だったのですが、この職員は非常に能力が低いうえに文句だけは一丁前に言うという人間で、あまりにも使えないため現場から外されて人事の係長になったというクセモノ。

 

 私が2棟目のアパートを購入し、所有する部屋数が10室を超えた段階で、私が所有する全ての物件の管理委託の契約書からレントロールまでしっかりと揃えて庶務課の人事に申告行ったわけです。

 

 そこで、その人事係長は申告が遅いとのたまったわけです。物件を購入する前に申告に来いということですね。確かに許可を取るために申告するのですから、5棟10室を超えてから申告するのでは順序が逆だという理屈は通っているように思えるかも知れません。

 

能力が低い人事の係長

 

 しかし、よく考えてみて下さい。物件を買ってもいないのに(所有権が移転していないのに)物件が欲しいなあと思っただけで申告しなくてはいけないのでしょうか。それとも所有権は移転していなくとも物件の売買契約を結んだ段階で申告しなくてはならないのでしょうか。

 

 そんなことはありませんよね。だって、物件の売買契約を結んだからって、売主がやっぱり売らないとかってことはよくあることです。銀行が融資をつけないから流れちゃうとか普通にありますよね。

 

 そうなると自分のものでもない物件を自分のものとして5棟10室の基準を超えたので申告するというおかしなことになってしまうわけです。他人の所有物を自己の所有と偽って申告して良い訳がありません。

 

 なので、私は前日の夕方に決済した後、次の日の朝に庶務課に行って申告したわけです。それ以上早く申告することは物理的に不可能であることを説明してその係長に申告の手続きを進めさせたのですが、これとはまた違うパターンがあることに最近気が付きました。

 

 賃貸用の物件が5棟10室を超えてはいないものの、年間の家賃収入が500万円以上になるパターンです。

 

 この場合にはいつ職場で申告すれば良いのかという問題が出てきます。つまり、家賃収入が500万円以上になることが見込まれた時点でか、実際に500万円以上になった時点でかという問題です。

超えることがわかった時点か、超えた時点か。それが問題だ

 さあ、「To be or not to be, that is the question.(生きるべきか死ぬべきか。それが問題だ)」 という冒頭のハムレットのセリフにやっとたどり着きました。

 

 家賃収入が500万円を超えると見込まれる時点で申告しなくてはいけないのか、それとも超えた時点で申告すればいのか。それが問題になってくるのです。

 

 私の場合は5棟10室を超えたのと500万円を超えることが見込まれるようになったのが同時でした。しかし、1棟が9部屋のアパートを購入した場合はどうなるでしょう。

 

 一部屋7万円で賃貸の募集を出しました。そうなると月額想定家賃は63万円です。年間では約750万円になります。

 

 この場合、5棟10室の基準には達していませんが、年間家賃収入500万円以上の基準には達しているように思えます。しかし、7万円で募集しても実際に7万円で入ってくれるかどうかはわかりませんし(家賃交渉されるかも知れませんし)、7万円で募集しているものの全く空室が埋まらずに年間の家賃収入が400万円に留まるかも知れません。

 

 そうなった場合、500万を超えるかどうかわからないまま申告をしなくてはならないのでしょうか。

 

 人事院規則14−8第1項関係第4項−二(3)を見てましょう。

 

「不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行っている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合」

 

 とあります。要は家賃収入が年間500万円以上である場合に自営に当たるものとして取り扱うということです。

 

 でも、これだけでは500万円になったら申告すれば良いのか、それとも500万円になるかも知れないと思ったら申告すれば良いのかはわかりませんよね。

 

 私のパターンと違うのは、やはり他人の所有物を自己の所有物として5棟10室の基準を超えたと申告するというのと、あくまで自己の所有物の家賃の想定というところでしょう。

 

 結局どうすれば良いのかということですが、人事院にこの件についての見解を確認してみました。

 

 回答は、

 

 あなたから「人事院規則14−8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」の解釈に関するメール相談を受信しました。

 

 すでにご承知のように、同通達第一項関係第4項第二号(3)により、「不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(中略)が年額500万円以上である場合」には自営に当たるものとして取り扱うこととされています。

 

 あなたの御質問である、500万円の取扱いについては「自営に係る兼業について(平成26年9月30日職審−296)」において、「賃貸料収入の金額は、申請時において見込まれる将来一年間の収入予定額で判断する。収入予定額とは家賃収入等をいい、経費等を控除した後の額ではない。

 

 すなわち、賃貸する際等における一年間の総収入(賃貸予定不動産等の家賃月額×室数×12月など)が500万円以上となる見込みであれば、自営に当たるものとして取り扱う」ものと解されています。

 

 個別の事案が自営兼業に該当するか否かは、職員が所属する各府省において具体の態様に照らして個別に判断することになることから、上記を踏まえ、御不明な点がありましたら、所属の人事担当者にご確認下さい。

 

 というものでした。つまり、500万円を超えると見込まれる時点で申告しなさい、そしてこの家賃収入は管理費も引く前、固定資産税はもちろん減価償却も引いた後の不動産所得の額ではなくて何にも引く前の家賃の合計である不動産収入のことだからねと念を押してます。

 

 これが人事院の解釈なのですが、このサイトをいつも見ている方はピンとくるかも知れません。そう、2000万円を運用するというページの主人公「鈴木さん」の話なのです。

 

 鈴木さんのアパートは9部屋で一部屋7万円平均ぐらいで貸しています。募集をかけてしばらく時間はかかったものの満室になり、今年の9月の段階で家賃収入が500万円を超えたため、人事に申告しに行ったら例の能力が低いくせに文句を言うのが大好きな係長に「遅いんだよ」と言われたわけです。

 

兼業申請が遅いと文句を言う人事の係長

 

 鈴木さんには「500万円に達する前に一応人事に話はしておいた方が良いですよ。」とは何度も言っておいたのですが、鈴木さん結構頑固でして私の忠告は聞き入れず…(^-^;

 

 で、納得できない鈴木さんは人事院にメールで問い合わせたところ、上記のような回答があったのです。

 

 今回はダメ係長の言っていることが正しかったわけで、鈴木さんもごめんなさいして遅くなったけど兼業をなんとか認めて下さいという始末書的なもの書き、今はお沙汰を待っている状態です(笑)

 

 まあ、どうしてもダメだって言うなら辞めちゃえば?とは言ってるんですけどね。奥さんも公務員だし、家賃収入で750万、ローンで250万、手取りで500万近く残るんだから普通に生きていけるわけじゃないですか。遊びでアルバイトでもしながら私とゴルフでもしてのんびり生きて行きましょうと誘っておきました。

 

 今回の兼業の申請の結果が出たらまたこのサイトで公開していきたいと思います。


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