自己資金はあった方が良いに決まっている
不動産投資の最大のメリットの一つとしてレバレッジがあります。例えば1億円で利回り10%の物件があったとして(諸費用とか税金とかそういうのは全て無視してください)、これを現金で買えばレバレッジは全く使わないことになり、本当のお金持ち以外は買えないということになります。
しかし、金融機関からの借入によって、自己資金が3000万円しかないのに1億円の物件が買えることもあります。
さらに言えば、購入する物件や借り入れする金融機関によっては自己資金を1円も使わずに物件を購入することが出来る(フルローンやときにはオーバーローンも)ということもあり得るわけです。
この仕組み(他人のお金を使って物件を購入する)のおかげで、私のような資産家に生まれたわけでもない一般人が何千万とか何億とかいう高額な物件を購入できるのが不動産投資なのですが、いくらレバレッジを効かせられるといっても、やはり自己資金はあった方が良いに決まっています。
理想を言えば、自己資金なんか全く使わずに全て他人のお金で資産を購入し続けられればそれが最高ではあります。
しかし、自己資金を使わなければそれだけ不動産投資は難しくなり、リスクも高くなっていくのです。
まず、物件の購入から物凄く不利になります。自己資金を全く使わずに物件を購入することは不可能ではありませんが(簡単に出来た時代もありましたが)、自己資金を持っている物件購入希望者と戦うのは至難の業です。
そもそも、フルローンで購入することが可能なようなお宝物件を見つけるのは最近では非常に難しいですし、運よくそんな物件を見つけられたとしても潤沢な自己資金を持っている人がいればすぐに買われてしまいます。
極端な話、自己資金ゼロの人と現金でその物件を購入出来る人とでは戦いにならないのです。金融機関の審査に通るかどうかもわかりませんし、運よく融資してもらえることになっても時間がかかり過ぎて審査に通った時にはすでにお宝物件はなくなってしまうと。
充分な資金を持っていれば、それが本当にお宝物件なら指値すらしないで買付を入れてきます。そして現金で買うのですからローン特約だって付けないわけです。勝ち目ないですよね?
まあ、現金で買う人にはそもそも勝てないのですが、ある程度頭金入れられる人と戦うのだって大変ですよ。例えば諸費用を払った上で3割も4割も頭金を入れられるのであれば、不動産屋の本気度も高いですし、審査通るのがわかっていればローン特約だって付けないでも良いこともあります。そうなると売主だってある程度の指値も受けてくれる可能性が高いですし、よし売ろうという気持ちにもなります。
自己資金ゼロです、指値もきついです、ローン特約も付けますでは売主側の不動産屋だって売主のところに持って行けないですよ。
仮に運が良くフルローンで購入出来たとしても、今度は家賃とローンの割合が厳しいことになります。ちょっと退去が続いてリフォームのお金がかかったり、空室が続いたりすればすぐにローンが払えなくなってしまう確率が物凄く高まります。
つまり、物凄く利回りの良い物件を購入できないと危ないんですね。リスクが高いのです。自己資金をある程度入れられるのであれば、ローンの支払い割合が低くなるので少々のリフォームや空室には耐えられるのですが、フルローンやオーバーローンではその分岐点がとても低いんです。
6000万円の物件を購入価格を操作して6500万円融資してもらい、4.5%でオーバーローンを組んだ知人がいます(どこの銀行かわかりますよね)。はっきり言って悲惨でしたよ。
10部屋のアパートで利回りは10%だったので、家賃は毎月50万前後入ってきましたが、毎月のローンの支払いが41万ちょっとだったので、2部屋空室が出ると毎月のキャッシュフローさえも赤字になってしまうのです。1部屋空いただけでも、リフォーム代や税金などを考慮すると完全に赤字になります。ローンの支払いがある20年の間に一回も退去が発生せずに満室状態を続けて初めてなんとかトントン。1回でも退去が出たら赤字という凄惨な状況でした。
知人は常に給料から不動産投資の赤字を補填していて、借り換えようにも他の金融機関には相手にしてもらえず、仮に借り換えられるとしても繰り上げ返済の違約金として120万以上払わねばならず、もう八方塞がりになっていました。
その後、ここ数年の物件価格の高騰によってなんとか売り抜くことが出来たのですが、あと1〜2年物件の価格が上がるのが遅かったらこの知人は間違いなく自己破産していましたね。
フルローンとかオーバーローンってかなり怖いことなんですよ。本来ならこの知人が買った物件は、利回りは10%あるし場所も横浜だったし、細かな問題はいくつかあったんですが結構良い物件だったんです。
それがオーバーローンを組もうとしたが故に金利は4.5%も払わないといけなくなり、これが2%で組めていたら同じ金額借りていても月々の支払は32万ちょっとですからね。これなら苦しいですがなんとかならないわけではありません。
もしも、頭金を3割入れて諸費用を払っていたらどうなるか。借り入れが4000万円で金利2%ですね。なんと支払いは20万ですよ。与信が良くて1%で借りられたら18万円しか払わなくて良いのです。家賃50万でローンが18万だったら本当に余裕ですよ。ローンの割合が三分の一ぐらいですからね。
頭金がないと良い物件を買うのが難しい(不可能ではないです)、そして買った後もリスクが高くなる。不動産投資の上級者なら良いんですよ。物件を見る目もあって購入出来るだけの与信や入れられる担保、銀行との付き合いなどもあったりします。そして購入後のキャッシュフローだってしっかり計算した上での判断が出来ますからね。
知識も経験も与信も給料以外の他の収入もない初心者がフルローンというのはかなりハードルが高いのです(住宅ローンを利用したりして返済期間が長かったり、金利が安かったりということがあればまた別ですが)。
いくら不動産投資がレバレッジを使えるとはいっても、やはりお金は貯めておくに越したことはありません。
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