不動産投資でキャッシュフローはもちろん大前提なのですが

キャッシュフローと純資産

 私たちのしている不動産投資の目的は値上がり益ではなく家賃収入であり、それはとりもなおさずキャッシュフローを目的に投資していることになります。

 

 近年はこれが重視され、不動産投資はとにもかくにも利回り命で、イールドギャップが大きく、キャッシュフローが大きく取れるものでなければ、不動産投資をやる意味がないと多くの人が考えています。

 

家賃収入

 

 これはもちろんその通りで、キャッシュフローが出ない物件を買ってはいけないのは当然です。それを前提としたうえで今回ちょっと違う見方で話をしていきたいと思います。

 

 家賃からローンを払い、さらに空室率やリフォームなどのメンテナンス代、税金等を計算すると僅かなキャッシュフローしか出ない物件というのは確かにあります。特にフルローンで組んだ物件や返済期間が短い物件などはキャッシュフローがあまり良くないことが多いです。

 

 例えば、ローンの支払いから空室、リフォーム代なども全部含んで毎年ほんの僅かしか手残りがなかったとしましょう。いや、マイナスにはならなくてもプラスのキャッシュフローが出ない状態だとします。

 

 そうした不動産投資はやる意味なんてないんですかという話です。キャッシュフローのみを考えるのならばこんなのやる意味なんてないですよね。やっても1円も儲からないわけで、ロバートキヨサキの定義からすれば、お金をポケットに入れてくれるものが資産であって、プラスのキャッシュフローを生まないこの投資は資産を買ったことにはならず、資産のみを買い続けることが成功の秘訣である以上、これはやる価値がないということになります。

 

 ところで不動産投資の目的ってなんでしょうか。資産を積み上げてキャッシュフローを増やしていくことですよね。

 

 さて、会計の貸借対照表の話をします。簡単に説明するので数字は俺嫌いなんだよねと嫌がらないで下さいね。

 

 例えば1000万円の土地を駐車場用にフルローンで購入したとします(数字を簡単にするために諸費用とかは無視して下さい)。その土地は貸借対照表の資産の部の固定資産のところに記載されます。

 

貸借対照表

 

 しかし、それと同時に貸借対照表の右側にある負債の部の固定負債に1000万円の借入が記載されます。そしてその下の純資産はゼロですね。これで貸借対照表の左と右のがバランスが取れています(この土地は時価でも1000万円で売れると仮定します)。

 

 支出と収入がバランスしてしまってプラスのキャッシュフローが出ないこの物件ですが、毎月ローンの支払いはされているため、負債の部の固定負債は毎月減っていきますが、資産の部の固定資産に載っているこの物件は土地なので減価償却せず1000万円のままです。

 

 こうなると左の資産の部が減らないのに右上の負債の部が減っていってしまい、左と右がバランスしないことになってしまいます。

 

 貸借対照表を見たことがある人ならわかりますよね。右下には純資産の部があるのです。

 

 負債の部が減った分だけ純資産は増えていくのです。左の資産の部が変わらない以上、右上の負債が減れば同じ額だけ右下の純資産が増えるのです。

 

 この物件を買った場合、プラスのキャッシュフローは出ないのですが、毎月毎月負債が減って純資産が増えていくのです。

 

 最高の貸借対照表は、負債がなくて資産の額=純資産の額であって、さらにこの貸借対照表が大きければ大きいほど良いわけです。

 

 つまり、この物件を購入することによって、まず貸借対照表の右も左もドカンと(1000万円分)大きくなり、そこから徐々に徐々に負債が小さくなりながら純資産が大きくなっていき、最終的にローンが終わると資産と純資産がバランスする最高のバランスシート(貸借対照表)となるわけです。

 

 それほどキャッシュフローを生まない物件でも、資産価値の大きいもの(都内や地方でも一等地の物件)であれば、やる価値のある不動産投資ということもあり得るのです。

 

 しつこいですが、キャッシュフローは基本なんですよ。だからキャッシュフローを生まない物件ばかり買っては話になりませんが、キャッシュフローをたくさん生まなくても資産価値が高かったり、フルローンの物件だったり、ローンの返済期間が短い物件だったりすれば、複数の物件の中にはそうした物件があっても良いのです。

 

 不動産投資をやる以上、利回りやキャッシュフローに拘るのも重要ですが、あまりこだわり過ぎるとチャンスを逃してしまったり、ポートフォリオのバランスが悪くなってしまうこともあるということです。


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