収益還元法

収益還元法について

 収益還元法という言葉を知っていますか。収益還元法とは物件から生み出される利益から物件の適正投資価格を算出する方法で、銀行が融資をする際の融資額の算定する際にも使われます。

 

 昔は、日本の銀行は収益還元法は採用せず、売買による平均的な価格や路線価などから物件の価格を算出し、その価格の3割を頭金として入れさせた上で残りの7割を融資するという形が多かったのですが、10年ほど前にある銀行が収益還元法を採用して融資額を大きく伸ばしたことから、他の銀行もこぞって収益還元法を採用した経緯があります。

 

 しかし、リーマンショック以降、融資の基準がかなり厳しくなり、単純に収益還元法で見て回るからフルローンを付けるということは少なくなり、収益還元法で見た上でさらに路線価の7割までしか貸さないといった銀行も多くなりました。都市銀ではなく地銀や信金であれば融資の基準も緩いところもあるので一律に厳しいわけではありませんが。

 

 しかし、不動産投資をやっていく上では収益還元法というのはやはりきちんと理解しておかなければなりません。単純に「物件から生み出される利益から適正価格を算出する方法」と言われても中々わかりませんよね。ここでは銀行が融資する際にどのような基準で収益還元法を使っているかちょっとわかりやすく説明してみたいと思います。

 

 簡単に言うと、銀行はその物件から得られる収入とローンがバランスすれば収益還元法の観点からするとお金を貸してくれるんですね。

 

バランス

 

 例えば1億円の物件を欲しいとします。手数料や税金などの購入時諸費用を自己資金で払えるとして、利回り10%な ら家賃が年間1千万入ってきます。そうすると月々の家賃収入が約80万円になります。もし、仮に20年ローンが組める物件だとして(築年数や構造にもよりますが)、金利を3%で借りれるとします。

 

 そうすると月々の支払いが約55万円になってきちんとローンが払えます。でも、銀行は貸さないんです。というのは、まず銀行は満室時の家賃の8割(ひどい銀行では6割)で計算(空室率20%)するんです。ということは、月々の家賃収入は64万ぐらいにしかならないと計算するんです。

 

 それでも、まだローンは払えると思いますよね。でも、まだ貸してくれないんです。というのは銀行はローンの金利を6%で計算するんですね。将来的に6%になることも有り得るとして。そう仮定すると、銀行が想定する月々の支払額が70万を超えてくるんですよ。実際の支払額が55万だとしても。

 

 さらに修繕費なども計算しますのでそうすると、支払いと収入がバランスしないので貸さないんです。

 

 ですから、購入時の諸費用を全部払えたとしても、表面で10%ぐらいの物件では、銀行はフルローンは出さないんですね。しかも、RCは銀行の評価は高いですけど、利回りの高い中古の木造や鉄骨では20年は中々最近はあまり組めないです。そうなると15年とか10年で組むことになるので、共担に入れられる物件でもない限りだいぶ頭金は入れないと貸してくれないということになります。

 

 銀行によってその基準は違うのですが、おおむねこのような基準の銀行が多いです。

 

 なので、空室率を20〜40%見て、金利を6%で計算して、さらに租税公課と定期的な修繕費を計算に入れてもローンが払えるなら銀行は今でもフルローン付けてくれる可能性はあります。

 

 東京でこの基準を満たすような物件を見つけるのはかなり難しいですが、頭金をいくらぐらい入れればこの計算で回るのかがわかっていれば、銀行との交渉の際に借り入れ金利などの面で役立ちます。


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