公務員の不動産投資

公務員の不動産投資って結局

 以前に公務員である消防士が不動産投資で年間7000万円もの賃貸収入を得ているのにも関わらず、許可を取っていなかったということで懲戒処分を受けたニュースがありました。

 

 その後、所有する賃貸収入目的の不動産を人事院の定める5棟10室以下に減らすよう勧告されるも、それを拒否、懲戒免職になったようです。

 

消防士

 

 最初に7000万円の賃貸収入が発覚した時、許可を得ずに5棟10室以上及び500万円以上の賃貸収入を得ていたということで、減給10分の1(3ヶ月)という懲戒処分になっていました。

 

 その後、5棟10室及び500万円以下に減らすように言われたがそれを拒否したため、懲戒免職という処分のようですが、懲戒の理由が上司の職務上の指示に従わず、さらにこれらの行為が公務員の信用失墜行為にあたるということです。

 

 これは中々難しい問題ですよ。そもそもの最初の懲戒処分(減給)の理由が許可を得ずに一定以上の賃貸収入を得ていたということですよね。つまり不動産投資をしていたのが問題ではなく、一定以上の賃貸収入を得ていたとしても(一定以下だったらそもそも問題にもならない)、許可を取っていたら問題はなかったわけです。

 

 減給という懲戒処分の後には、当然、自分の不動産所得を申告して許可を求めたはずですが、それを役所は拒否したということだと思います。

 

 その許可を出さなかった理由はなんなのでしょうか。そこがきっちりと説明できないと裁判になった時に役所は厳しいですよ。人事院の規則でも一定以上は上司の許可を取らないといけないという規定はあるものの、どれくらいだったら許可をしてどれくらいだったら許可をしてはいけないという基準は何もないわけです。つまり、許可とは言え実質は届出というか認可ぐらいの感じです。

 

 もちろん、所有している賃貸物件を反社会的団体などに貸しているとか、風俗店に賃貸しているとかであれば許可を出さないきちんとした理由になりますよ。でも、もし、そうでないとしたら賃貸収入の多寡によって許可・不許可には出来ないはずです。つまり、金額で決まるのならば1000万円以上はダメとか規則にきちんと謳っているはずですが、それがない以上、金額では決めれません。

 

 なので、もし、この懲戒免職が不当だとして裁判になった時には、許可を出さなかったことが不当でないということを疎明しなくてはなりません(難しいと思いますが)。規模や面積などの要件がローカルなルールであってそれに基づいて許可をしなかったということであっても、そもそもその人事院の規則にないローカルなルール(各自治体等の独自の基準)が不当ではないということも疎明しなくてはなりません。

 

 そして、懲戒免職の理由として地方公務員法32条に違反した、つまり、上司の職務上の命令にに従わなかったことをあげていますが、これも厳しいと思うんですよね。

 

 だって、本人の所有している物件を売れって言ってるんですよ。そんな仕事とは全く関係のない本人のプライベートな部分で財産権を犯すような命令って出来るんですか。いや、もちろん出来ると思いますよ、さっき言ったみたいに反社会的な団体に物件を賃貸していたりすれば、当然そういった命令も出せると思います。

 

 でも、本人が普通の人に物件を貸していて、それを申告しているのに許可を出さないでおいて、売却しろなんて命令は、その命令自体に明白な瑕疵があるとも主張できると思いますし、そうであればその命令に従う必要はありません。

 

 結局、この消防士さんの不動産投資に許可を出さないこと自体が不当で、その不当な行為によって許可されなかった物件の所有権を破棄(つまり売却)しろという命令自体に重大な瑕疵があるとも言え、さらに、もしも命令に重大な瑕疵がなく、地方公務員法32条違反が適用されたとしても、懲戒免職という処分は重過ぎるため、裁判になったら懲戒免職は不当だとして取り消される可能性が非常に高いと思います。

 

 飲酒運転で捕まった市の職員を懲戒免職にした処分だって不当に重いと最高裁で取り消しになっているんですよ。飲酒運転撲滅が社会的運動にもなってるこのご時勢にです。飲酒運転は犯罪ですが、不動産投資は犯罪ではありません。それと比べればこの懲戒免職という処分の重さがわかると思います。

 

 また、「これらの行為が公務員の失墜行為にあたる」ということも理由にあげていますが(これらの行為が何を指すのかが不明瞭で、上司の指示に従わなかったことなのか、自分の所有する物件を売らないことなのかわかりませんが)、ストーカーで捕まったって免職までいってないのに、自分の所有する物件を売らなかったということが反社会的行為で、公務員の信用を失墜させる行為だから懲戒免職に値するとは到底思えません。

 

 これ佐賀広域消防局ですけど、地方だからなのかなあ。私は国家公務員だったのですが、きちんと訟務担当の部署があり、また上級官庁が監督していたので、職員に関しても訴訟になった時に負ける可能性が高いような処分はまず出しませんでしたね。懲戒免職にせずに依願退職で退職金も出すということで本人を説得し、免職という争いの起こる形にせずに停職6か月そして本人の意思で依願退職という定番の処分にどうして持ち込めなかったのか。地方の方だと裁判慣れしていない部分もあるのかも知れません。まあ、本人が意固地になって絶対辞めない!ってなってた可能性もありますが。

 

 こいつ、無許可で不動産投資してこんなに儲けやがって!えーい、懲戒処分で減給だ〜。え?許可しろ?ダメ。500万以下になるように全部売れ(どうせ売らないんだろ?早く自分から辞めろよ。退職金出すからさ)。売らない?辞めない?じゃあ懲戒免職にするぞ(え?脅しが効かない?)。くっそー、じゃあ本当に懲戒免職にしてやる!

 

 なんてことではないかと、勝手に想像しています(笑)

 

 公務員の不動産投資に関してのこの処分。消防士さんが処分を不当だと訴えるのかわかりませんが、今後に注目したいと思います。


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